盗撮のマスコミ報道について

目次

1.事件の概要と問題点

2.盗撮事件は基本的に報道されない

3.逮捕されなくても報道される職業

4.報道は「刑罰」ではないのか?

5.マスコミ報道の統制

6.まとめ

 

1.事件の概要と問題点

 盗撮事件のマスコミ報道が続いています。つい先日も、横浜で、僧侶による女子高生の盗撮事件が報道されました。ネットでは、面白おかしく僧侶の盗撮事件を拡散し、名前や顔写真までも公開されているようです。

 なお、僧侶の盗撮事件はこれだけではなく、寺のトイレに盗撮器具を設置した事件、京都駅のエスカレーターで盗撮した事件、焼き肉店のトイレに盗撮機器を設置した事件等、多くの事件がネットで出てきます。(普通の会社員による盗撮事件では、とてもこんなに多数のネット記事は見つかりません。)

 僧侶という立場にありながら、盗撮という恥ずべき罪を犯しているのですから、ネットなどで報道されるのも、ある意味やむを得ないことでしょう。ただ、マスコミに報道され、ネットで拡散されることは、自業自得とはいえ盗撮犯やその家族にとって、死活問題ともいえる事態になります。

 一方、同じような盗撮行為をしていても、まったくマスコミに取り上げられない場合もあります。いったい、何がこのような違いを生み出すのか、本当に現状のままで問題ないのかを検討してみたいと思います。

 

2.盗撮事件は基本的に報道されない

 盗撮事件の場合、報道される場合の方が少数といえます。毎日かなりの数の盗撮事件が起きていますが、そのほとんどは報道されずに終わっているのです。当事務所でも、多数の盗撮事件を扱っていますが、マスコミに取り上げられるのはほんの一部に過ぎません。

 まず、逮捕・勾留される事件でないと、基本的にはマスコミに取り上げられることはありません。盗撮事件で逮捕される場合は、最近はかなり減ってきています。(特殊な盗撮器具を用いて盗撮した場合や、ことさら逃げようとした場合などは逮捕の可能性が高まりますが。)逮捕されないと、基本的にマスコミには報道されないのです。

 

3.逮捕されなくても報道される職業

 しかし、逮捕されていなくても、マスコミが取り上げる場合があります。盗撮の事件を起こしたひとが、一定の職業についている場合などです。

 まず、公務員の場合には、マスコミは目の敵にしているかのように報道します。当事務所でも、市役所の職員などの盗撮事件の場合、逮捕されていないにもかかわらず、報道されました。名前は直接出しませんが、所属と住所と年齢を書かれますから、事実上特定されてしまいます。

 その他、学校の先生、警察官、検察官、裁判官、弁護士といった職業の場合には、逮捕されなくとも報道されることを覚悟しないといけません。盗撮で捕まったときに、自分の職業を隠そうとする人がいるのはそのためです。

 

4.報道は「刑罰」ではないのか?

 盗撮事件で捕まっても、初犯なら罰金30万円程度で済みます。現実問題として、何回も盗撮の再犯を繰り返しても、罰金程度で住んでいる人も沢山います。(最近は厳しくなってきましたので、3回目にはまず起訴されて、正式裁判になりますが。)

 30万円の罰金刑を下すだけでも、司法は非常に慎重な手続きを取ります。国民の生命・自由・財産を奪う刑罰は、国家がしっかりと統制して、慎重なうえにも慎重に課さないといけないという決まりがあるためです。これ自体は大変良いことです。

 その一方、刑罰よりもはるかに重大な影響をあたえるマスコミ報道については、国家により事実上野放しにされています。30万円の罰金により、人生が終了する人はいませんが、マスコミ報道とそれに続くネットでのつるし上げという「刑罰」によっては、事実上人生が終了することになります。

 

5.マスコミ報道の統制

 たとえ盗撮という卑劣な行為をした人でも、刑罰によらないで人生を終わらせて良いのかは疑問です。さらに、マスコミ報道される人とされない人がいるとなると、不公平感はぬぐえません。

 それなら、マスコミ報道も「罰」の一種にして、国家が統制した方が良いのではという考えも出てきます。実際、江戸時代の「市中引き回し」は「罰」の一種でした。それよりはるかに影響力の大きい、「インターネットさらし者の刑」が、事実上のリンチとされているのは問題に思えます。

 ただ、マスコミの盗撮事件の報道などに国家がかかわろうとすると、「言論の自由の侵害」「マスコミの報道の自由を侵し、ひいては国民の知る権利を妨害する」などと言って反対する人が多数出てきます。そういう一面があることは間違いないでしょうが、盗撮事件のマスコミ報道など、このままで本当に良いのかは、問題とされるべきだと思うのです。

 

6.まとめ

 盗撮事件は、日々ニュース報道されています。そして、盗撮事件の犯人は、マスコミ報道に加えてネットでもさらし者になることが多いです。ただ、事実上マスコミ報道されるものとされないものがでて、両者に大きな不公平があるのも事実です。これをそのままにしておいて良いのか、国民の判断が必要なのではと考えます。

 

(文責:大山 滋郎 令和元年7月23日)

 

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